火星生命の謎【北加伊堂】 |
火星の写真(NASA)
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はじめに
太陽系の9つの惑星の中で、地球に最も近い環境を持つ火星は、地球外生命を持つ可能性のある星として注目されてきました。今世紀の最初の頃には、火星には大規模な運河があり、タコの親戚のような形をした火星人がいると信じられた時もありますが、今ではそのような高等生命の存在は否定されています。しかしバクテリアレベルの原始的な生命なら、存在するかもしれないと考えられています。
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もし火星に生命がいるとしたら
火星にはかつて大量の水が存在した時代があったと考えられています。その水は現在は地下や極の地方に氷として残っているかもしれません。するとその氷の周囲に微生物が存在するかもしれないのです。
しかし生命が誕生するには、かなりの条件が整わなければなりません。地球の場合は、46億年前に地球が誕生し、35億年くらい前に最初の生命が誕生したらしく、そのために10億年以上もの年月が費やされています。その間、地球の表面には生命の源になる水が充分に存在していましたが、火星の場合はどうでしょうか?今や過去の一時のことではなく、長い年月にわたって生命に適する環境が整わないと、生命の誕生はあり得ないでしょう。
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火星からの隕石の写真(NASA)
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火星からの隕石
1996年8月、アメリカ航空宇宙局(NASA)が大発表を行いました。それは、火星からやってきたと考えられる隕石の中に、生命の痕跡と思われるいくつかの証拠を発見したというものです。その隕石は1984年に南極のアランヒルズという場所で採取され、ALH84001という符号を付けられました。その隕石に含まれている微量なガスを分析した結果、1976年に火星に軟着陸したバイキング探査機が調べた火星の大気と同じ化学組成をしていることが分かりました。そして1994年頃、科学者たちはその隕石の中に生命の痕跡と思われるいくつかの証拠を見つけ、2年間の研究を続けたのち発表したのです。
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隕石の電子顕微鏡写真(NASA)
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証拠の一つめは電子顕微鏡写真のバクテリアの化石のように見える物体です。長さが380nmとバクテリアにしては小さいサイズですが、生命のように見えなくもありません。しかしこれだけでは証拠というには余りにも不十分です。次にその岩石にはオレンジ色に見える炭酸塩や有機物の塊が見つかったこと。そして生命が関与したときだけに出来る磁鉄鉱の分析結果。これら一つ一つは単独で生命の証拠といえるほどの決定的なものではありませんが、まとまって存在することから生命がいたと考えた方が自然だというのです。
このALH84001という隕石の鉱物学的な調査から、今から45億年前に岩石として結晶し、1600万年間、宇宙空間で宇宙線にさらされ、1万3000年前に地球上に落ちたという事が分かっています。 |
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マースパスファインダーから見た火星表面の写真(NASA)
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これからの火星探査
1997年7月4日、マースパスファインダーという探査機が火星に軟着陸し、6輪車が火星の表面を走り回ったことは、記憶に新しいところです。あの時、多くのメディアで火星の生命の探査が・・・。という言葉が使われましたが、本当の意味での火星の生命の探査はまだまだこれからです。マースパスファインダー以後、地球と火星の位置関係が良くなる約2年おきに小さな探査機を2機づつ火星に送り、2005年くらいに火星の岩石のサンプルを宇宙ステーションに持ち帰って分析するという計画が進んでいます。そのときはじめて本来の意味での火星の生命探査がスタートすることになります。生命の痕跡を探る調査は大変複雑なので、火星に送り込む小さなロボット探査機ではとうてい行うことが出来ません。サンプルを持ち帰り人間が分析をすることは不可欠なのです。
火星生命の持つ意味
地球には確かに生命が誕生しました。46億年かかって人間という知性を持った生き物を生み出しました。さてこれは特別なことなのでしょうか? それとも環境さえ整えばどの星でも起こることなのでしょうか?その答えを出してくれそうなのが火星です。もし火星に生命が存在すれば、太陽系以外の惑星系でも同じように生命が誕生する確率があることになります。もし火星に生命が存在しなければ、何か地球に特別な条件があったということになり、太陽系以外に生命が存在する確率は低くなります。火星に生命が誕生したかどうかを調べるのは、地球に住む私たちという生命のことを調べることなのです。
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